経済教育学会第20回全国大会のご案内

2004年12月4-5日(土・日)/松本大学

 

■大会テーマ 学生・地域・社会の期待と経済教育―理想の学び舎を求めて―

■実行委員長メッセージ

大会実行委員長 佐藤進(松本大学)

はたらけど はたらけど 猶(なほ)わが生活(くらし)
楽にならざり ぢっと手を見る
この次の 休みに一日 寝てみむと
思ひ過ごしぬ 三年(みとせ)このかた
(石川啄木「一握の砂」(1910年)より)

 トヨタは2005年にはGMやフォードと肩を並べる月産700万台の半ばを海外で生産することになるといわれています(『日本経済新聞』2004年7月14日)。我が国の大企業が名実ともに世界企業として威容を誇るようになったときに、100年も前の歌が今の世の人々が抱く切実な思いを鮮やかに描けているのは、なぜでしょうか。いや、こういえば「仕事があるならまだいい。無いことのほうが何よりもつらい。」といいたくなる人もまた多いでしょう。
  「地域」とは、労働と生活の現場でもありますが、そこで人々はそれぞれに「経済」を日々実感しています。その仲間入りをしかけている我が学生諸君も、矛盾をはらむ「経済」を肌で感じているに違いありません。では、そうであるならば、地域に住む各世代は、経済学にこの矛盾を解決する道を求めているでしょうか?経済学でなくても、経済にかかわる諸分野の科学に対しては?我が学会に対する地域・社会からの宿題はきわめて大きいといわなければなりません。
  経済教育学会第20回大会は松本市にある松本大学において開催されます。松本大学は地域に根ざし、地域の明日を担う人を育てることを標榜しています。松本がその中央に位置する信州は、「日本の背骨」といわれる高地に広がる雄大で美しい自然と行楽の里として古くから知られています。しかし最近では大きな財政赤字を背景にして数年前から劇的な県政の転換が起こり、その余波が今も続いている県であり、市町村の合併問題が住民自身の問題として最も熱心に議論されている県としても知られています。住民みずからが明日の「暮らし」すなわち「経済」を真剣になって考えている証(あかし)といえるでしょう。
この地とこの大学を開催地とする大会は、おのずとそれにふさわしい雰囲気を漂わすことになります。それは「地域・社会」と「経済」と「教育」という三つの分野の密接な関わりを考えさせるような雰囲気です。そこでこの雰囲気に合う以下のプログラムを大会に織り込んでみました。

1 菅谷昭(すげのや あきら)松本市長による記念講演
  菅谷氏は1996年信州大学医学部助教授を辞め、単身ベラルーシ共和国へ渡り、チェルノブイリ原発事故の被災地で5年半、子どもの甲状腺がんの手術や検診など医療支援をされました(帰国後長野県衛生部長を経て今年3月の松本市市長選に当選)。全国各地の講演で、子どもたちに「人の役に立つ人間になってほしい」と語りかけてこられたとのことです。

2 シンポジウム「学生・地域・社会の期待と経済教育─理想の学舎を求めて─」
  経済・社会・地域・教育それぞれのプロが、テーマが求める課題を鮮やかに描き出してくれると思います。

3 地域を学ぶことをテーマとする学生参加の全体分科会
  第2日目の午後は実践を重視する我が学会の方向を示す試みが紹介されます。もちろん、経済教育の課題は上記の範囲に尽きるものではありません。第2日の午前-昼まで多くの分科会には全国からの学会員による多彩な教育内容と実践の経験が披露されます。

 学会員、非学会員を問わず、全国から多数の参加者のおいでをお待ちしています。また現地実行委員会としては、「地域に住む人々に開かれた大会」をめざすつもりです。地域の方々にも参加を広く呼びかけ、できれば学会員と地域住民のにぎやかな交流の場となればと願っています。12月の信州は寒くなると思いますが、雪でも見ながら(ほんとうの)温泉に浸かるなど季節の楽しみはじゅうぶんあります。できれば前後に時間の余裕を確保してお楽しみください。

■大会プログラム

12月4日(土)
時間 会場 プログラム
11:30-12:30  

幹事会

 

受付開始

13:20

開会

13:20-13:30

  歓迎挨拶 中野和朗 (松本大学学長)
13:20-14:30   記念講演
「高度加齢・少子社会への急速進展―量から質への転換に向けて」(仮題)
菅谷昭 (松本市長)
14:30-14:40 休憩
14:40-17:10  

シンポジウム
「学生・地域・社会の期待と経済教育―理想の学び舎を求めて―」

司会


パネリスト

三宅忠和(日本大学)
佐藤進(松本大学)

岡田知弘(京都大学大学院経済学研究科教授)
川田悦子(元衆議院議員・元薬害エイズ訴訟原告団副代表)
手塚英男(元松本市中央図書館長・生涯学習実践者)
林義樹(横浜国立大学大学教育総合センター教授)

17:20-17:50   総会
18:20-20:00 梓水苑 懇親会(会費4,000円)
12月5日(日)
時間 会場 プログラム
9:30-11:00
分科会
 

(1)導入教育

  1. 今井浩太郎(松本大学)「高等学校と大学の接続について」

  2. 長島誠一(東京経済大学)「導入教育の経験」

  3. 水野英雄(愛知教育大学)「経済教育の必要性と目標:何をいかに教えるべきか」

  4. 小森治夫(京都橘女子大学)「経済教育における3つの試み―講義『経済学概論II』の実践から」

  司会:増田正人(法政大学)

 

(2)社会と教育

  1. 川西重忠(桜美林大学)「大学連合北東アジア研究と企業のアライアンスに関する実践報告」

  2. 鈴木典夫(福岡教育大学) 「地域と経済学―地域から経済学教育を再考する」

  3. 森靖雄(東邦学園大学) 「日本語でできる海外インターンシップの実践報告」

  司会:宇佐見義尚(亜細亜大学)

 

(3)制度・カリキュラム

  1. 小黒正夫(旭川大学)「地方私立経済単科大学は生き残れるか」

  2. 吉村宗隆(羽衣国際大学) 「ロースクールにおける経済学教育―専門的学際教育の課題と展望」

  3. 吉野文雄(拓殖大学) 「国家試験における経済学―公認会計士試験と監査の妥当性」

  司会:一井昭(中央大学)/佐中忠司(広島女学院大学)

 

(4)教育方法

  1. 大谷和海(京都文教高等学校)「高校生に対する経済的論理思考の涵養―第3回日経stockリーグの取り組から」

  2. 水野勝之(明治大学) 「地域貢献のパフォーマンスを含めての経済教育」

  3. 保立雅紀(東京工大附属工業高校) 「シミュレーションを用いた学習の実践―経営ゲーム、株式学習ゲームについて」

  4. 桜田忠衛(京都大学) 「学部生・大学院生を対象にした情報資料調査教育の経験―講義『経済資料調査論』を担当して」

  司会:猪瀬武則(弘前大学)/橋本勝(岡山大学)

11:00-11:10 休憩
11:10-12:40 分科会
 

(5)専門教育

  1. 櫛田豊(青森大学)「教育産業におけるサービス生産物」

  2. 佐々木洋(札幌学院大学) 「『日本経済論』講義と統計資料編集について」

  3. 村田和博(埼玉学園大学)「学生の実態をふまえて経営学史をどのように講義するのか―基本的事項の確認をしつつ進める講義」

  司会:横田数弘(富山商船高等専門学校)

 

(6)学生参加

  1. 丹下晴喜(愛媛大学)「在日外国人の生活史調査を通じた『学び』の実践」(学生主体の教育のあり方)」

  2. 住吉広行・松本大学各ゼミ学生(松本大学) 「信州でのグリーンツーリズムと地域の活性化」

  3. 長谷川伸(関西大学)「学ぶ場を自ら築く学生参画型授業の開発と実践」

  司会:猪瀬武則(弘前大学)

 

(7)情報機器

  1. 森本孝(嘉悦大学)「社会科学系学部におけるノートパソコン全学生保有を前提とした教育支援システムの一事例とその課題─嘉悦大学経営経済学部の事例をもとに─」

  2. 赤間道夫(愛媛大学) 「地域における公衆無線LAN利用の現状と課題、学生主体のパソコン教室」(学生報告)

  3. 斎藤清(兵庫県立大学)「Web上のセミマクロ長期データを視覚化する経済情報教育」

  司会:草原光明(日本大学)

 

(8)国際関係─アジア太平洋地域の経済教育

  1. 濱地秀行(北海道教育大学) 「『国際経済サミット』を用いたアメリカの経済教育」

  2. 阿部信太郎(城西国際大学)/浅野忠克(山村学園短期大学)/山岡道男(早稲田大学)/新井明(都立西高校)/猪瀬武則(弘前大学)/下村和平(京都府立山城高校)/保立雅紀(東工大付属工業高校)「パーソナル・ファイナンス教育の日米比較─第6回生活経済テストの作成と結果」

  3. グェン・ドゥック・ラップ(広島修道大学)「ベトナムにおける経済教育の現状と課題」

  司会:浅野忠克(山村学園短期大学)/山岡道男(早稲田大学)

12:40-13:40 昼食休憩
13:40-15:30 分科会
 

(9)地域

  1. 藤岡惇(立命館大学)/十川泰成(立命館大学)「学びの成果をよりよい地域づくりに活用する授業―『近江草津論』2年間の経験の紹介」

  2. 白戸洋・松本大学各ゼミ学生(松本大学) 「地域に飛び出す学生たち」

  3. 鈴木誠(岐阜経済大学) 「地域社会と協働した体験型地域経済教育の試み―岐阜経済大学まちなか研究室 「マイスター倶楽部」の試み」

  司会:森靖雄/長谷川伸

  閉会

 

■松本大学へのアクセス・交通

■問い合せ先

佐藤 進(松本大学松商短期大学部)
〒390-1295 長野県松本市新村2095-1
Tel:0263-48-7273(研究室直通)
Tel:0263-48-7200(大学代表)
Fax:0263-48-7290(大学)
E-mail:

■大会ポスター・チラシ


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