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北野正一著「ヒトと社会の科学」に関するインタビュー

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 Interview Date:2017年6月24日            
Interviewee:北野 正一(兵庫県立大学 名誉教授)   
Interviewer:竹田 英司(松山短期大学 特任准教授) 
 
 
Q:北野先生の研究分野を教えてください。
A:景気循環論、日本経済論、社会改革イデオロギー論です。
 
Q:「ヒトと社会の科学」の学術的な目的はどこにありますか?
A:「ヒトと社会の科学」の目的は、人類の危機の今、人類史を反省し、人類が確かに存続し、発達できる展望を示すことです。
 
Q:存続可能な将来社会像に対する、北野先生のお考えをお聞かせください。
A:存続可能な将来社会像について、コミュニテイを基礎とした事業体市場と公的制度として、またそこへ到達する過程と結合させて展望を示したいです。
 
Q:「ヒトと社会の科学」を通じた経済教育に対する提唱はありますか?
A:「ヒトと社会の科学」から導かれた経済教育の課題は、次の二つです。①第一に、この展望と、それを支える理論を理解すること、その為に必要な歴史的現実に関する知識を習得することです。②第二に、学び手が社会人として分担することになる企業等の事業体に関して、これを第一の展望の中で位置付けること、次に事業体の創造、運営、発展のための理念、理論、方法、事実を習得することです。
 
Q:「ヒトと社会の科学」を通じて、経済教育学会会員のみなさんに、どのようなことを伝えたいですか?
A:宇宙船地球号の共同乗組員である人類のどの個人にとっても、個人の認識は局限されざるを得ず、これを社会的に統合する仕組みが必要です。従って、社会諸科学を分担する学者、研究者としては、経済と社会に関する全体認識に関して立論し、政策提起すべきだということです。専門分化が進む現状の下で、現実社会が要請している全体認識や展望は、その専門家が協力して提起せねばならず、これは学者の職業的役割であり、義務だという点です(Weberは大学人の「職業としての学問」を価値不問と批判しました)。
 
Q:経済学者が果たす役割は、どのようにあるべきだとお考えですか?
A:その固有の役割は、経済を規定する主因となった市場を理解し、閉塞を脱却するための協力による改革運動を説明することです。将来展望は市場を利用した構造となるからです。
 
Q:市場に対する、北野先生のご見解をお聞かせください。
A:SmithもMarxも市場の構造を二重の分業と協業と想定していました。従って、市場の理解はSmithの価格論を定式化した一般均衡論と市場の動学である置塩蓄積論とでマクロの骨格は解明されています。Schumpeterの動学は静学と革新の導入、普及の循環過程ですから、この二つの理論に制度変革(寡占と代議制政治改革)が加わります。これら経済的下部に対する「上部構造」は、Weber-森嶋の上部先導論、Senの権限アプローチによる行動論が解明しました。これらを統合すれば、マクロの構造変化を含んだ経済社会動学が解明されます。
 
Q:社会の理解、理論、理念は、どのようにあるべきだとお考えですか?
A:重要なのは分析主義、実証主義によって盲目となった現状を打開する為に総合が必要だ、という点です。社会科学はその祖Conteの方法、Parsons等の社会システム論(構造、行動、機能論)によって再統合すべき。直前にSmithとMarxを統合しました。この下部構造と理念を含む上部構造(政治、共同、思想・文化、意識)をWeber-森嶋-Senで統合しました。人びとが実際に住み働き実践する地域経済、事業体経営の教育を経済理論以上に重視すべきです。
 
Q:最後に、経済教育学会会員のみなさんに一言お願いします。
A:1776年、仏は自由、平等、友愛の美しい理念を掲げて革命に成功した後、激震し、閉塞しました。ここで社会科学の祖Comteは、社会展望をもとめて、解釈でなくて、予測・予知のための歴史的現実の理解を訴え、自ら天文学の社会人教育に打ち込みました。社会諸科学が発達した現在、私たちは、学び手の生涯に亘る活動に役立つことになる現実理解と予測・予知できる社会科学を創造し、教育していきましょう。